ストーリー 04

『THE TRANSFORMERS LEGENDS OF THE MICRONS “LINKAGE”』
PART1/PART2/PART3/PART4/PART5/PART6/PART7
PART8/PART9/PART10/PART11/PART12/PART13/総括

PART12
あらすじ:ラヴィナスの正体はサイバトロンだった。彼はマイクロン達の力で、元の姿に戻される。そして破滅の種子は、レッドラインによって封印された…。彼らは、悪しき創造主・ユニクロンを倒すため、故郷への帰還を決意。そして、ステラとの別れを交わすのだった…。

ストーリー詳細
ミッドシップ「<目覚めたマイクロンどもが集結している…>」
テイルスライド「<未覚醒だったパネルがあれだけ残っているとわかってりゃあ
もっと楽に事を運べられたろうにな>」
(通信機でアクアレイダーチームに呼びかけるミッドシップ)
ミッドシップ「<アクアレイダーチーム撤退だ!トランスフェイズ・モードで脱出せよ!!>」


アクアレイダーチーム「<アイアイ!>」
インパルサー「あ!捕虜が逃げるぞ、くそっ!」

捕虜にされていたアクアレイダーチームは、身体を微粒子化させる
「トランスフェイズ・モード」で脱出に成功(右上の画像参照)。
その頃ラヴィナスは、集結したたくさんのマイクロン達が放つ
エネルギーの力によって、徐々に姿が変化していった…。


トゥワール「彼(ラヴィナス)をどうするの?」
コンバスタ「かわいそうに。あいつは人為的にマイクロンへの依存体質に
変異させられた犠牲者だよ。並の方法じゃとても修復できやしない…。
だからあいつの体内時間を逆転して、元の体に戻すのさ」
トゥワール「そんな事ができるの?」
コンバスタ「ああ、今のあたし達ならね!おまえも手伝っておやり。
だが、あの石(破滅の種子)だけは…どうにも手の出しようがない。
あまりにも強く、そして今にもはじけそうなほど脆いんだ…」

レッドラインは、凄まじいエネルギーを発する破滅の種子に手を伸ばす。
その力は、彼の右腕をボロボロにしてしまう…。
一方ミッドシップ達は、“ポータル”(時空間の穴)を開いていた。


インパルサー「レッドのあにき!敵のやつらがポータルを開いたよ。
その物騒な石(破滅の種子)をやつらの陣地にお見舞いしてやろうぜ!」
(ダブルフェイスに手引きされ、ポータルで撤退を図るミッドシップ達)
レッドライン「いや…」
ファルシア「レッド?何する気?!」

レッドラインは、破滅の種子を自らの胸の中に入れようとする…!


レッドライン「この中に閉じた次元を作って、結晶体を封じ込めた。
これでもう、その破壊的な力が他に及ぶことはない」
ファルシア「でも…」
レッドライン「これは生き物たちの心なんだ!それも苦しみに満ちた…。
このまま放り投げるなんて、僕にはできない!この力を鎮める方法が見つかるまで、
結晶体は僕が預かる。もしも危険だと思うなら、僕をリンケージから切り離してくれ!」
(彼らの敵・アップグレード達は、ポータルの彼方に消えた…)


ファルシア「このバカ!」(レッドの頭を小突く)
レッドライン「いて!」
フラットアウト「また先走りやがって。お前ひとりに面倒を押しつけるかよ!」
キングボルト「いまや結晶体の処置は、マイクロンの責任となった」
コンバスタ「わかったら次元のアクセスをこっちにも開きな、おセンチ坊や!」

かくして、破滅の種子による危機は回避されたのだった…。
その夜。バンブルとプライムが、レッドライン達の前に現れた。


バンブル「…今の力で、どこまで奴に太刀打ちできるかわからない。
でも僕たち、行くと決めたよ!」
キングボルト「マスターキーは我らを内なるシステムの軛より解き放ってくれた。
だがそれだけでは不十分だ!我らの生に目的を課し、
運命をあやつる存在との繋がりを断たねば、真の自由を得た事にはならない。
悪しき創造主、ユニクロンを倒さなければ!」

マイクロン達は、故郷・セイバートロン星への帰還を決意。
本来の姿に戻されたサイバトロン・ラヴィナスも、
彼らに同行し、故郷に帰還することとなった(右上の画像参照)。

翌日。とうとう別れの時が来た…。空の光点を指差すステラ。


ステラ「見て…。あれが友達の宇宙船?」
レッドライン「アクサロンだ。みんなが呼んでる…僕らも追いかけなきゃ」
ステラ「ねえ、あたしにも…何か、できる事があると思うの」
レッドライン「僕らの望みは、君がここで幸せに暮らすことだよ」
ステラ「そんなの無理だわ!もう二度と、あなたたちと会えないんじゃ…」


レッドライン「知ってる?マイクロンの心は、遥かな昔に人間から分けてもらって
生まれたものなんだ。僕たち二つの種族の心は、奥深いところで繋がっている…
どんなに遠く離れていてもね。だから悲しまないで、僕らの幸運と未来を
信じていてほしい…。それが僕らには、何より強い手助けだから」
ステラ「わかったわ、レッド…(レッドラインを抱きしめ、気持ちを切り替えるステラ)。
じゃあ、チアリーダーの衣装も出しとかなきゃね!ほら、みんなも来て!」

別れの抱擁を交わすステラとマイクロン達。

抱き合うインパルサーだったが…
ステラ「で、あんた誰?」


レッドライン「“恐らくもう、ここへは戻らない…。でもかならず、
君にサインを送るよ。生き延びることができたら…”」

マイクロン達は、ステラを残し、地球を飛び去っていった…。

感想&解説
アクアレイダーチームの「トランスフェイズ・モード」とは、アニメでダブルフェイスも度々行っていた“微粒子化機能”を作動させた状態と思われます。なお、スピードチェイサーチームの3人も(コンバージョンされたマイクロン全員が)、この機能を使用可能かは不明です。個人的には、多くのTFが使えるとその機能の“特殊性”が薄れるので、ダブルフェイスとアクアレイダーチームの3人だけが持つ能力の方がいいんですけど。

ラヴィナスを元の姿に戻そうとするマイクロン達の中には、デューンバギー型マイクロン・スパイクらしき姿もあります。アニメでサイバトロン側にいたので、色違いの別人なのかも。

アップグレード達が開いた「ポータル(門や入口の意)」ですが、これは時空に開けられた穴(ワームホールの入口のようなもの)のことです。このポータルは恐らく、アニメの第43話や第44話に登場した、“ブラックホール”などと呼ばれていたものと同一と思われます。なおこの時、ポータルの前にはPART8に続きダブルフェイスの姿も確認できます。

レッドラインが破滅の種子を自らの体内に作った閉じた次元に封じ込めるシーンは、彼の“優しさと強さ”が感じられていいですね。なおこの時、結晶体の力によってレッドの右腕はボロボロになってしまったのですが、のちの場面では一時的な装甲(?)が取り付けられています。一人に面倒を押し付けようとしない、マイクロン同士の絆もいい感じです。今後の“結晶体の処置”は、新たに物語を作れそうかも…。

「悪しき創造主、ユニクロンを倒さなければ!」と大勢のマイクロン達の前で発言するキングボルトは、人格的にもサイバトロンでいう“コンボイ”のような存在に見えます。もしマイクロン種族にリーダー(指導者)がいるとしたら、恐らくキングボルトでしょうね。でもまぁ、マイクロンという種族にはサイバトロンやデストロンのように、リーダーは存在しないのかもしれませんが。アニメでも本作でも、はっきりと種族のリーダーとして描かれたマイクロンはいませんでしたし、リーダーが存在しないことが、“種族の特徴”とも言えるかもしれません。

ラヴィナスの本来の姿は、何とG1TFのダイノボット部隊のメンバー・スウープの同型でした(!)。テラソーと同じプテラノドン型TFが元の姿というのは、面白い設定です。

レッドライン達がデバスターから譲り受けた快速宇宙艇は、マイクロンを進化させる計画に中の機械類が使われたり、アクアレイダーチームの攻撃を受けたりしましたが、セイバートロン星への宇宙航行にラヴィナスが乗り込み、再び使用されることになったようです。どうやらこの宇宙船は完全に修理されたわけではなく、数人のマイクロン達が進化によって獲得した力で船を支え、飛行可能にしているみたいです。

レッドラインがステラにマイクロンと人間という“2つの種族の絆”について語る場面は、本作の中で個人的に好きなシーンの一つです。バックのラッドとウィーリーのシルエットも印象的で、アニメの第46話ともオーバーラップしてきます。恐らくこのマイクロンと人間の繋がりや、キングボルトのセリフにある「運命をあやつる存在(ユニクロン)との繋がり」は、この作品のタイトルである「LINKAGE」が表すものなんだと思われます。

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PART13
あらすじ:ついにユニクロンとの戦いが始まった。一方地球では、ステラがマイクロン達に向けて、精神的支援を行っていた。レッドラインは、“ユニクロン達が恐れる理由”を、自分達は持っていると言う…。そして1年後、ステラにマイクロン達から、“サイン”が届いた。

ストーリー詳細
ステラ「“マイクロンたちと別れたあと、あたしは慣れない絵描きを
始めることにした。彼らを勇気づけるイメージを思い浮かべて、
それをずっと忘れずにいるために。いわゆる精神的支援ってやつね…。
この気持ちはきっと、彼らに届いているはず。
そして、ほんの少しでも、彼らの暗い刻に光を灯せると信じてる…”」


地球に残ったステラは、絵を描くことで、マイクロン達に精神的支援を行っていた。
その“想い”が届いていると信じ、遥か彼方のセイバートロン星に向けて…。

(ステラが絵を描いていた頃、セイバートロン星の軌道上では、
TF連合軍とユニクロンの、壮大・壮絶な戦いが繰り広げられていた)


ステラ「“もちろん彼らは悪い怪物を倒すわ!そしてついに、新しい
安住の地を見つけるの。それから──そうね、
空に浮かぶお城を建てて、そこでみんないつまでも幸せに…”」

場面はセイバートロン星に移る。戦いを前に意気込む、
キングボルト、インパルサー、クェンチの3人…

キングボルト「インパルサー!クェンチ!
これが最後の戦いだ。何か言っておくことはないか?」
クェンチ「俺もステラとハグしたかった」
インパルサー「まーだ言ってるよ、このとっつぁん!」
クェンチ「うさ晴らしにひと暴れするか。でもってさっさと終わらせちまおうぜ!」


一方、コンバスタ、ファルシア、トゥワールの3人と、ラヴィナスは…

コンバスタ「そっちの旦那はもういいのかい?」
ラヴィナス「おれ戦う!あやまちを正す!!」

手裏剣形態のトゥワールで、ユニクロンの防衛ドローンを切り裂くラヴィナス。
そして、激しい戦闘が繰り広げられる中、レッドラインとミッドシップが激突。


ミッドシップ「<見つけたぞ、赤いの!!>」
レッドライン「コードネーム:ミッドシップか!君たちを
討つには忍びない。引っ込んでいろ!」
ミッドシップ「<だまれ!!貴様など、病んだ細胞の一片にすぎぬ
無価値な存在。滅ぶべき理由しか持たぬ者だ!!>」

レッドライン「どうかな!そうしてお前たちが恐れる理由を
僕らは持っている。今からそれを見せてやろう!!」

ユニクロンと、マイクロン達が合体した光のユニクロンが睨み合う中、
レッドラインとミッドシップの因縁の対決が繰り広げられた。

そして、TF連合軍とユニクロンの戦いは、ついに終結を迎える…。


マイクロン達が地球を去ってから1年が経った。地球のステラは、マイクロン達との
日々が全て夢だったかのように、すっかり以前の普通の生活を取り戻していた…。

ステラ「“あれから一年が過ぎた…。レッド達がその後どうなったのか、
ずっとわからないまま。あたしは以前の生活にすっかり
逆戻り…。これでも大きいロボットと殴り合いした事あるだなんて信じられる?
そのうち彼らとの日々も、ただの夢だったと感じるように──”」


友人達との食事中、マイクロン達のことを思い
ぼんやりとしていたステラだったが、突然の友人の声に我に返る。

ステラの友人「ステラ?ちょっとステラ、どうしたの?!」
ステラ「なにが?…」

ステラは自分の髪の変化に気づく。何と、髪が緑色に光り輝き、
その一部が“プラチナブロンド”に変わっていたのだった…。


ステラ「プラチナブロンド…
“あの子たち!そうよ、これはみんなからのサイン──
待って…何かが見える”」(目を閉じるステラ)


“新しい安住の地”…“空に浮かぶお城”…
ステラの想いが現実になったかのような光景がそこには広がっていた。
そして、レッドライン達の姿も…!

ステラ「“ウソみたい!ええもちろん、これは本当のこと──
あたしにはわかっていたもの!だから、この願いもきっとかなうわ。
──そう、明日にも!”」

 THE END

感想&解説
ついに最終話です。冒頭やラストの“ ”で囲まれたステラのセリフは、彼女のモノローグであることを表しています。なお、前回ステラは北西ハワイ諸島の島でマイクロン達と別れたようですが、家へは恐らく転送ビーチマットを使い帰ってきたと思われます。

冒頭のユニクロンは、まさに荒ぶる神って感じで大迫力(上から2番目の画像参照)。アニメに登場していたデストロン軍の巡洋艦も、赤紫色と緑色の2タイプとも確認できます。

クェンチは、キングボルトに「何か言っておくことはないか?」って聞かれて、言うことが「俺もステラとハグしたかった」かよ…(笑)。さすが“とっつぁん”。まぁ、インパルサーは前回ハグしてましたもんね。「あんた誰?」って言われたけど(苦笑)。あとラヴィナスですが、彼は姿だけでなく喋り方も、G1ダイノボットっぽいですね。彼とトゥワールは“エントランス”の一件のためか、すっかり仲良くなったようです。

レッドラインとミッドシップは、まさに因縁の対決といった感じ。ミッドシップは、インドでの戦闘でレッドから反撃を食らい、その後も破滅の種子によるリンケージ破壊作戦を阻止されたりしてるので、相当憎いんでしょうね。レッドラインを「赤いの!」と呼び、怒り狂い襲い掛かるミッドシップは、彼のキャラがよく表れていると思います。

戦闘シーンでは、アニメにも登場していたユニクロンの球状の“防衛ドローン”が出てますが、本作ではアニメ未登場のロボットモードも描かれています。その他、光のユニクロンや重装備のウルトラマグナス・ロボットモード、アニメ未登場マイクロンのプロール(銃形態)やショックウェーブなどの姿も確認できます。

レッドラインの「お前たちが恐れる理由を僕らは持っている」というセリフの“恐れる理由”とは、恐らくタイトルの「LINKAGE」が表す“絆”と考えられます。実際アニメでは、地球の子供達とマイクロン達の絆によって、ユニクロンは再び力を失い、戦いが終結するに至っています。PART12のレッドの、「僕たち二つの種族の心は、奥深いところで繋がっている…どんなに遠く離れていてもね」というセリフも思い起こされます。ユニクロンは、生物が争い合うことにより生まれる怒りと憎しみ(負の想念)を自らの糧とすることができますが、恐らくその対極にあるのが、アニメでも度々登場した“信頼”や、他者との繋がり=“絆”というものなんだと思います。そういったものの力を、ユニクロンは恐れていたのかも…。

TF連合軍とユニクロンの戦いが、どのようにして終結を迎えたかは、アニメで語られています。そのため、その詳細は(ページ数の関係もあるけど)本作では描かれていません。

ミッドシップ達がどうなったのかも、結末は明らかにされてませんが、個人的には助かっていてほしいとも思います。彼らも一応、フィクサーバグの犠牲者なので。

レッドライン達がステラに送った“サイン”は、PART11でステラが言っていた「あたしもプラチナブロンドに変身できたらいいのに」というセリフからですね。ファルシアのアイデアでしょうか?なお、ステラの髪は赤をベースに、一部がプラチナブロンドに変化しています。

ラストのどこかの惑星のシーンは、ステラの「もちろん彼らは悪い怪物を倒すわ!そしてついに、新しい安住の地を見つけるの。それから──そうね、空に浮かぶお城を建てて、そこでみんないつまでも幸せに…」という、彼女のマイクロン達への“想い”が現実となったかのようです。PART12でレッドラインが、「僕らの幸運と未来を信じていてほしい…。それが僕らには、何より強い手助けだから」と言っているように、実際に、ステラの想いはマイクロン達の元へと届き、彼らがユニクロンを打ち倒す力になったとも考えられます。このシーンでは再びレッドの「僕たち二つの種族の心は、奥深いところで繋がっている…どんなに遠く離れていてもね」という言葉もオーバーラップしてきます。

“新しい安住の地”、“空に浮かぶお城”が現実になったように、ステラのもう一つの願いも叶うかも…、そんな彼女とマイクロン達の再会を予感させ、物語は幕を閉じるのでした。

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総括:レジェンズ・オブ・ザ・マイクロンズ・“リンケージ”

本作『LINKAGE』は、短いページ数ながら密度が濃く、完成度も高い作品です。絵も綺麗で(しかもフルカラー)、アニメのフォローもされており(下記リスト参照)、『マイクロン伝説』を補完するという意味でも、重要な作品だと思います。アニメでは(基本的に)、電子音のような独自の言語で喋っていたマイクロン達ですが、本作では彼らの言葉が翻訳されている点も大きな特徴。そのため、各マイクロンの個性も明確となり、非常に魅力的に描かれています。しかし、本作はDVDの初回特典だったため、残念ながら知名度は低いです。なので、当サイトで少しでも本作について知ってもらえれば幸いです。

本作がフォローしているアニメの補足点は以下の通りです(まだあるかも)。
・エボリューション機能の詳細(分子モディファイや合体コマンドなど)
・マイクロン達と人間(子供達)は、どのような方法で意志疎通を行っているか
・一部の大型TF(デバスターなど)は、どのような方法で地球に来たか
・ダートに関する補足(彼がデバスターのパートナーマイクロンになった経緯など)
・マイクロン達が“悪”と認識しているデストロンのパートナーになる理由
・地球を発った後のマイクロン達が発揮した、スーパーパワーの秘密
・マイクロン達がアニメ第41話から突然地球の言語を喋れるようになった理由
・アニメ第46話でマイクロン種族が自我に目覚めたことに関する補足
・アニメ第51話でマイクロン達が再び自我を取り戻したことに関する補足

作者の市川裕文さんについて、私が知っている範囲で紹介しておきます(基本的に本作のプロフィールからの情報ですが)。市川さんは、漫画家・玩具デザイナーで、漫画の代表作は『混淆世界ボルドー』。「ミクロマン」などの玩具デザインや、TF商品のキャラクター設定、パッケージイラストなどを多数手掛けており、またライターとして、『ビーストウォーズ ユニバース』や各種TF・DVDのブックレット記事も執筆。海外版TFのトイやアニメ、コミックなどにも造詣が深いようで、TFに関する知識は相当なものと思われます。実際、この作品にはTFシリーズの様々な要素が散りばめられています。

タイトルの「LINKAGE」ですが、これは直訳すると“連関”や“繋がり”といった意味。恐らく本作では、転じて「絆」という意味も含まれていると思われます。PART12とPART13の「感想&解説」でも触れていますが、このタイトルは、マイクロン達の“集合無意識の領域”を指すだけでなく、“マイクロン同士の絆”や“マイクロンとユニクロンの繋がり”、そして“マイクロンと人間の繋がり”など、様々なものを表しているんでしょうね。

そういえば、本作やアニメ『マイクロン伝説』には、目に見えない一種の“精神的な力”(信頼や絆、想いや願いなど…)が度々登場しています。ユニクロンが生物の怒りと憎しみをエネルギーとするというのもそうですし、断末魔の想念から作られた破滅の種子や、ウィーリーの行った時空転移、子供達との出会いによるマイクロン種族の自我獲得も、そのような力が作用したと考えられます。PART11で「精神次元」という言葉が出てくるように、少なくともこの作品世界では、確固としてそれらは存在するのかもしれません。ちなみに『BW』でも、“精神的階層”という概念が登場しています。

本作の人間側の主人公は、ステラ・ホリーという26歳の女性です。女性の、しかも大人というのは、TFシリーズでも珍しいと思われます。また、本作は“マイクロン”を中心とした物語である点も、特徴の一つ。日本の作品では特にですが、TFシリーズでは“サイバトロンとデストロンの戦い”を物語の中心に据えたものが多い気がします。個人的には同じようなパターンの作品よりも、この作品のような(良い意味で)斬新な作品がもっと増えてほしいと思いました(もちろんそれには、センスが問われますが)。私がTFシリーズに求めているのは、オリジナルの『BW』や、本作のような感じの作品かも、と思いました。

なお本作には、アニメには登場しない設定なども数多く投入されています。アニメの内容と矛盾が生じないようにしつつ、新たな要素を付加し、作品の世界観を補強しています。通常だったら、もっと差し障りのない(別の言い方をすれば、あってもなくてもいいような)内容の作品になりそうですが、新たな設定を臆すことなく盛り込んでいる点は、個人的に評価できます(センスがいいから、というのもあるけど)。「デジタルエンティティ・フレーム」や「リンケージ」などは、マイクロン種族に深みを与えているように思います。

また、本作の細かな工夫に“吹き出し”があります。TFのセリフの吹き出しは角ばったもので、人間の吹き出しは楕円形や、角の円いものが使われており、特徴的です。

その他細部にもこだわりが感じられる描写が多数あります。PART3に登場した「転送ビーチマット」が、PART5やPART8でも再登場していたり、PART13の1コマ目のステラの部屋のテーブルに「マイクロンジョイント」(恐らく彼女の愛車の物)が置かれていたりと、注意しなければ見落としてしまうネタもたくさんあります。

本作には、ファンならニヤリとしてしまうような、TFシリーズの過去の作品などからのネタと思われるものも、いくつか盛り込まれています。レッドライン達がリンケージに意識を投入するエピソードは、『BW』でライノックスがオプティマスを救うため、トランスワープ・スペースに意識を投入するシーンを彷彿とさせ、また破滅の種子は、『ザ・ムービー』での「マトリクス」のようでもあります。あと、人間の女性(ステラ)が強かったり、ラヴィナスに「シークレットエンブレム」があったり…。私が気づいていないだけで、他にもまだあるかもしれません。こういったお遊び的なネタは、『BW』などの作品にも見られたものです。

また、TF以外の作品からのネタ(パロディ)と思われるものも、本作には見られます。例えば、レッドラインの「レッド」や、「破滅の種子」という名称は、アメコミの『ヘルボーイ』からかもしれません。PART6のコンバスタ初登場の場面も、海外ドラマの『ダーク・エンジェル』っぽいです(スペース・ニードルという塔の上にたたずんでいる画)。その物語の舞台も“シアトル”らしいし。あと、ステラの愛車が変形したパワードスーツも、『エイリアン2』の“パワーローダー”がモチーフかも…(それとも「エクソスーツ」?)。

本作はれっきとした“公式”の作品であり、全体的な質も高いので、もっと多くの人が入手しやすい形にしてほしかったと、今更ながら思いました。(2010/03/02)


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